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応用ゲノミクス研究室の伊藤雅信教授、日本蚕糸学会賞受賞

この度、カイコのアルカリ性フォスファターゼ遺伝子(Bmalp)の遺伝子重複のメカニズムと重複後の機能分化に係る研究成果が認められ、日本蚕糸学会賞受賞となりました。

受賞テーマ:家蚕アルカリ性フォスファターゼ遺伝子座の分子進化学的研究

(内容)カイコガ幼虫の中腸で発現する膜結合型・遊離型の2種アルカリ性フォスファターゼ(ALP)に着目することで,昆虫で初めてalp遺伝子のクローニングに成功すると同時に、これらが第3染色体に近接して座乗する遺伝子であることを解明しました。アミノ酸配列に基づく系統解析から、ALPは大腸菌からヒトに至るまですべてが単一起源である可能性が高く,遺伝子重複による産物である可能性を明らかにしました。さらに、特異抗体を用いた免疫組織染色による2種ALPの組織内発現部位の比較や、突然変異による生存や妊性への影響評価などにより、その機能分化が相互補完可能な範囲にとどまることを示しました。ALPに注目したゲノム配列解析は、カイコガの家畜化過程と祖先種とされるクワコとの関係を類推することも可能になります。これらの研究成果は、多くの生物に共通して存在しているにも係わらず,生体内での基質を含め未だ謎の多いALPの機能や起源の解明につながるものと期待されています。

令和7年度 日本蚕糸学会賞受賞記念講演