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タイ王国チェンマイ大学(国際交流協定校)医学部生化学教室から大学院生を受け入れ、蘭の一種に老化抑制効果があることを見出し発表しました(バイオメディカルセンター)

バイオメディカルセンターでは本学と国際交流協定を結んでいるタイ王国のチェンマイ大学医学部生化学教室から大学院博士課程学生Pensiri Buacheenさんを受け入れ(タイ政府奨学金と当センター産学共同研究費)、ショウジョウバエの早期老化モデルを用いてタイ原産の植物に抗老化効果がないか調査する共同研究を1年間実施しました。宝石蘭の一種Anoectochilus burmannicus(AB)抽出液には、培養細胞に対して抗酸化作用、抗炎症作用、抗インスリン抵抗性作用、および抗肥満作用があります。そこでこれを生体に与えたときに、抗酸化効果および抗老化効果がないか調べました。この目的のため、活性酸素種の蓄積が促進されるため早期に老化するショウジョウバエSod1欠損変異体を用いました。この早期老化モデルにAB抽出物(ABE)を与えると、ショウジョウバエ成虫の寿命が有意に延長されるとともに、老化に伴う行動量の低下も抑制されました。ABEは、酸化ストレスマーカーであるグルタチオンSトランスフェラーゼの発現を抑制することで、成虫筋肉において加齢に伴う損傷タンパク質の蓄積を減少させました。この結果は、試験管内でABEが活性酸素種の生成を減少させるという結果と一致します。ABEを培養細胞に添加すると、炎症性サイトカインTNF-αの抑制により、加齢関連疾患であるインスリン抵抗性を軽減し、これにより脂肪細胞におけるインスリン刺激性グルコース取り込みを増加させました。ABEは健康促進、酸化ストレスの予防、加齢関連疾患に効果がある機能性食品として有望です。以上の成果が分子生物学分野の国際誌Int.J. Mol. Sciに掲載されました。バイオメディカルセンターの井上喜博博士が学位審査を担当し、Buacheenさん(現生化学教室講師)にPhD(チェンマイ大)の学位が授与されました。
Buacheen, P.; Karinchai, J.; Inthachat, W.; Butkinaree, C.; Wongnoppawich, A.; Imsumran, A.; Temviriyanukul, P.; Inoue, Y.H.*; Pitchakarn, P*. Anoectochilus burmannicus Extract Rescues Aging-Related Phenotypes in Drosophila Susceptible to Oxidative Stress-Induced Senescence. Int. J. Mol. Sci. 2025, 26, 5694. https://doi.org/10.3390/ijms26125694 (*責任著者)