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資源昆虫学研究室の秋野順治教授、日本応用動物昆虫学会賞受賞

この度、真社会性昆虫をはじめとする様々な昆虫の化学擬態に関するこれまでの研究成果が認められ、日本応用動物昆虫学会賞受賞となりました。

受賞テーマ:昆虫の化学擬態に関する研究

(内容)真社会性昆虫は、巣仲間や餌などを化学シグナルによって認識している.一方,昆虫たちの中にはこの高度な能力を利用することで,真社会性昆虫を欺いているものがいる.化学情報で敵を欺くことを化学擬態と言う.化学擬態は応用昆虫学の観点において非常に興味深いものの,その実態はほとんど解明されてこなかった. アリの社会生活基盤は、巣仲間を見分ける同巣認識にあるが、その認識シグナルが体表炭化水素であることを行動化学生態学的に証明し、そのうえで、特定のアリ種と絶対共生関係を構築するシジミチョウ幼虫が宿主アリ種の同巣認識シグナルを前適応的に模倣することでアリ社会に侵入すること、他方多種アリと共生可能な条件的共生タイプのシジミチョウはアリの攻撃性を汎用的に抑制する化学物質でアリを懐柔すること、アリに捕食されるリスクが高い鱗翅目類幼虫でも視覚擬態者であるトビモンオオエダシャクは宿主植物を化学的に模倣することで捕食者を欺く隠蔽的化学擬態をすること、また視覚擬態で花に似せたハナカマキリは集合フェロモンの模倣によってトウヨウミツバチを誘引捕獲する攻撃型化学擬態を行うことなど、化学物質を介した生物種間での生存戦略を明らかにしてきました。これらの研究成果は、化学生態学分野における重要な進展で、近年問題化している真社会性外来種の行動制御法と防除技術の開発にもつながるものと言えます。

2025年 日本応用動物昆虫学会賞受賞記念講演