sp_menu

ショウジョウバエの早期老化モデルを用いて健康食品の抗老化効果の評価とそれに含まれる責任物質候補の同定に成功(産学および大学間共同研究)

 バイオメディカル教育研究分野の井上喜博教授と大学院生 幸野凪さんらは、ショウジョウバエの早期老化モデルを用いて、単細胞藻類抽出物を主成分とする健康食品に寿命延長効果、生体老化を抑制する効果があることを見出しました。さらにそれに含まれる微量成分がその効果を担うことも示しました。

 

 従来の老化メカニズムならびに抗老化物質の研究には哺乳類のモデルが使われて来ましたが、結果を得るのに年数がかかるという問題点があります。種々の病気や老化の主原因のひとつに強い酸化力を示す活性酸素種が体内に蓄積することが挙げられています。正常な個体ではこれを除去する酵素群が働きますが、加齢とともにその働きが低下します。これをショウジョウバエの体内にある全細胞あるいは組織特異的に低下させると老化表現型がより早く表れます。当分野ではこの早期老化モデル成虫の筋肉、神経系および消化管の細胞に表れる老化表現型を調べることにより、生体老化の進行を定量化する方法を確立させ、老化に関連する遺伝子の解析、および老化を抑える効果がある薬剤、食品等を探索し、その作用メカニズムを解析してきました。本研究は、健康食品企業(サンクロレラkk)ならびに京都大学大学院農学研究科 佐藤健司教授(食品化学)との共同研究により、Chlorella pyrenoidosa の抽出液を主成分とする食品に、このショウジョウバエモデルの寿命を延長させる活性があること、さらにこの抽出液中に含まれる微量成分 Phenythlamine が寿命延長活性の責任物質のひとつであることをつきとめました。以上の成果を国際誌Journal of Food Bioactives (IF 3.470) に発表しました。さらに、当分野では、ショウジョウバエの実験系を用いて、この食品が寿命の延長だけでなく筋肉老化を抑制することも見出しています。現在、このアンチエイジング効果の作用機構について遺伝子レベルの解明を進めています。

 

Zhenga, Y., Inoue, Y.H., Kohno, N., Fujishima, M., Okumura, E., Sato, K. Phenethylamine in hot water extract of Chlorella pyrenoidosa expands lifespan of SOD1 mutant adults of Drosophila melanogaster at very low dose. J. Food Bioact. (2020)9:52–57.