sp_menu

ほとんどフィブロインでできた繭を作るカイコの作出に成功。国際誌Internarional Journal of Molecular Science (IF=6.208) に掲載

 昆虫工学の博士前期課程大学院生山野真奈さん、廣瀬涼子さん、博士後期課程大学院生Lye Ping Yingさん、小谷英治教授らの研究により、繭成分を人工的に操作したカイコの作出に成功しました。通常の繭糸は、内層のフィブロインタンパク質と外層のセリシンタンパク質からなり、セリシンは絹糸を取り出すための製糸と精練の過程で除かれます。この精練までの過程でカイコ由来の何らかの物質がセリシン層に溶け込み、フィブロイン糸の周りに残留することで絹アレルギーが生じるとされています。そこで、フィブロインのみでできた繭を作り出すことで、精練までの工程を省くことができ、絹アレルギーの心配のないフィブロインを作ることができると期待されます。著者たちは、中部絹糸腺のセリシン産生機能を遺伝子組換え技術でほぼ完全に抑制することに成功しました。セリシン産生機能の抑制は、通常のゲノム編集などの技術ではなく、独自に開発したモンシロチョウゲノム修飾酵素の機能を応用することで達成しました。得られた高フィブロイン繭から、除セリシン処理なしでフィブロイン素材が得られ、スポンジ加工での優位性も認められました。さらに、軟骨分化モデル細胞の培養での優位性も認められました。このことから、高フィブロイン繭から得られるアレルゲンフリーの繭は今後、生体におけるバイオマテリアル利用に大いに期待がもたれます。
 
Yamano M, Hirose R, Lye P Y, Kotani E. et al.
Bioengineered Silkworm for Producing Cocoons with High Fibroin Content for Regenerated Fibroin Biomaterial-Based Applications.
Int. J. Mol. Sci. 202223(13), 7433; https://doi.org/10.3390/ijms23137433 (7月1日受理)