シダ植物の光合成機能に関するエストニアなど複数国との国際共同研究 ― シダ植物から高等植物へと進化する過程で、葉緑体や細胞壁の変化がCO2透過性・光合成速度を上昇させてきた可能性を解明 ―
植物分子工学分野 半塲教授と西田博士は、エストニアなど複数国との国際共同研究により、シダ植物から高等植物へと進化する過程で、葉緑体や細胞壁の変化がCO2透過性・光合成速度を上昇させてきた可能性を明らかにしました。
光合成は植物がさまざまな環境に適応する上で鍵となる機能である。植物は進化に伴って乾燥地や湿地、高山など、水分状態や光、気温などの環境が全く異なるさまざまな場所に生育地を拡大してきた。にもかかわらず、植物が進化に伴ってどのように光合成機能を発達させてきたかについては研究がほとんど進んでおらず、特に原始的な維管束植物であるシダ植物に関する研究は大幅に遅れている。われわれは、シダ植物の光合成機能を制御している生理的・形態的な因子を明らかにすることによって、光合成の進化プロセスを解明することを目的として、スペイン、エストニア、チリ、および日本の4カ国でそれぞれの国に自生している合計35種のシダ植物を用いて研究を行った。シダ植物の光合成機能に関するものとしては、これまでで最も大規模な研究のうちの1つである。研究の結果、次のことが明らかになった。
- シダ植物の光合成速度は、葉内のCO2透過性(葉肉コンダクタンス)によって強く制御されている。シダ植物の葉肉コンダクタンスは、高等植物よりも低い値である。
- シダ植物の葉肉コンダクタンスは、葉内における葉緑体の発達度、および葉の細胞における細胞壁の厚さに強く影響を受けている。シダ植物は高等植物よりも葉緑体の発達度が低く、細胞壁は厚い傾向にある。
これらの結果から、植物はシダ植物から高等植物へと進化する過程で、葉緑体を発達させ、さらに細胞壁を薄くするという形態的な変化を通じて、葉内のCO2透過性を高め光合成速度を上昇させてきた可能性が明らかになった。
掲載論文へのリンク: