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シャルコー・マリー・トゥース病の原因遺伝子SCO2のショウジョウバエホモログScoxのグリア細胞特異的ノックダウンが運動機能障害を引き起こすこと、を明らかに。

染色体工学分野の4回生 古和田凌祐さんと吉田英樹准教授らは、グリア細胞特異的なScoxノックダウンが、ミトコンドリアの機能低下を誘導し、運動機能障害を示すことを明らかにしました。本成果は、Scientific Report誌に掲載されました。

シャルコー・マリー・トゥース(CMT)病は、最も頻度が高い遺伝性の末梢神経疾患の総称で、下腿、足、上肢や手に筋萎縮や感覚低下がみられる疾患です。多数の原因遺伝子が同定されていますが、そのうちの一つであるSynthesis of cytochrome c oxidase 2 (SCO2)は、ミトコンドリアの呼吸鎖複合体形成に不可欠な遺伝子です。本研究では、SCO2のショウジョウバエホモログScoxの神経特異的ノックダウンでは、ショウジョウバエの運動機能に異常が見られない一方、グリア細胞特異的なノックダウンでは、グリア細胞のミトコンドリアの形態異常および機能低下、末梢神経の神経筋接合部の形態異常等が引き起こされ、その結果、ショウジョウバエ幼虫、成虫の運動機能が低下することを明らかにしました。更に、この運動機能低下は、ショウジョウバエにおいて、ミエリン形成を担うオリゴデンドロサイトによく似た機能を持つ被覆グリア(ensheating glia)でのScoxノックダウンにより誘導されることも併せて報告しました。SCO2は、CMT4型に分類され、脱髄もしくは軸索変性が見られることから、本研究で明らかにしたショウジョウバエにおける被覆グリアでのScox機能低下が、運動機能障害を誘導することは、SCO2機能異常を原因としたCMT病患者の病態を再現している可能性が考えられます。

 

The function of Scox in glial cells is essential for locomotive ability in Drosophila. Kowada R, Kodani A, Ida H, Yamaguchi M, Lee IS, Okada Y, Yoshida H. Scientific Reports. (2021) doi.org/10.1038/s41598-021-00663-2 (Accepted 15 Oct. 2021).