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ショウジョウバエのヘテロクロマチンタンパク質HP1aと複製因子Mcm10のDNA複製など重要な細胞機能における新しい機能の発見  ― ロンドン大学との共同研究で、高インパクトの国際的学術雑誌に掲載 ―

 DNA複製開始因子として知られるMcm10とヘテロクロマチンタンパク質HP1aは共にDNA複製制御に関与することが知られていた。両遺伝子をそれぞれショウジョウバエ複眼原基細胞でノックダウンすると細胞周期S期の進行が阻害され、DNA複製への関与が確認された。またそれと同時に異所的なDNA合成を伴うDNAダメージの蓄積も観察され、両タンパク質のゲノム構造維持への関わりも明らかになった。一方Proximity Ligationアッセイ(PLA)と免疫共沈降法により、HP1aがS期にMcm10、RFC140、DNAポリメラーゼε等のDNA複製関連タンパク質と核内で近接して存在していること、また特にMcm10とHP1a間のPLAシグナルが、通常の体細胞分裂サイクルを行なっている細胞では見られるが、染色体の多糸化をもたらすエンドサイクルを行なっている細胞では見られないこと、一方Mcm10とDNAポリメラーゼε間のPLAシグナル(赤)は多糸染色体(青)の見られるエンドサイクル細胞でも観察されることも明らかにした(右図、図内の黄色の矢頭はヘテロクロマチン化しているクロモセンター部位)。さらにMcm10とHP1aが光受容細胞R1、R6とR7の分化にも必須であり、これは転写因子Lozengeの遺伝子発現制御を介して行われることも明らかにした。

Mcm10

 本研究は、染色体工学分野 山口教授らのグループがロンドン大学との共同研究で、DNA複製因子とヘテロクロマチン化に関わるHP1aがDNA複製、G1期-S期チェックポイント、ゲノム構造維持と細胞分化等、複数の細胞内機能を担うことを明らかにしたものであり、分子生物学や細胞生物学の分野で学術的なインパクトが大きい。本研究は、Impact Factor 10.1の国際学術誌「Nucleic Acids Research」に掲載された(Nucleic Acids Res. 45(3): 1233-1254, 2017)。また筆頭著者となっている博士後期課程学生は、分子生物学分野で最も権威のある国際学会コールドスプリングハーバーミーティングで本研究テーマについて発表し、Student stipend awardを受賞している。