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ショウジョウバエ雄の減数分裂が始まるタイミングを決める制御メカニズムの一端を解明

 バイオメディカル研究分野の大学院生山添幹太さん、岡崎亮太郎さん(卒業生)と井上喜博教授らは、核膜の穴にあるNup62複合体が細胞分裂の開始因子を選択的に通過させることが、ショウジョウバエ雄の減数分裂を始めるタイミングを決めていることを明らかにし、Cells誌(IF=5.656)に発表しました。
 生殖細胞を作る減数分裂は、体細胞の分裂とは異なる制御機構のもとで進行する発生現象です。減数分裂における染色体分配に異常がおきるとダウン症などの遺伝病の原因になるのでその開始、進行は多くの遺伝子、タンパク質により厳密にコントロールされています。バイオメディカル研究分野ではショウジョウバエ雄の減数分裂に焦点をあてて、その開始機構の研究をおこなっています。細胞分裂を誘導する因子サイクリンBは酵母からヒトまで真核生物に共通です。今回、この因子が核膜にあいた核膜孔を通過して核から細胞質に排出されることが雄減数分裂の開始に必須であることを、ショウジョウバエを用いた遺伝学的解析から明らかにしました。この通過には核膜孔内で『門番』の働きをしているNup62タンパク質複合体が核外排出因子Embタンパク質と協力してサイクリンを選択的に通過させる。それが減数分裂開始の引き金をひくことがわかりました。この過程が正常におこなわれないと減数分裂をスキップして異常精子ができてしまいます。それらは卵と受精できません。ヒトの男性不妊症のなかには正常な精子をつくれない症例が多数知られています。今回の研究成果はこのような病気の理解にも役立つことが期待されます。
 日本細胞生物学会第72回大会(6/9〜11日京都みやこめっせ)では核膜と核膜孔に関するシンポジウム(オーガナイザー井上)が開催されます。学部生は参加費無料ですので多数ご参加ください。 http://icongroup.co.jp/jscb2020/

Ryotaro Okazaki, Kanta Yamazoe, and Yoshihiro H. Inoue. “Nuclear export of cyclin B
mediated by the Nup62 complex is required for meiotic initiation in Drosophila males.
Cells 2020 9, 270-291; doi:10.3390/cells9020270; (accepted 20 January 2020)