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マウス大腸におけるセロトニン含有腸内分泌細胞の形態と分布を明らかに(豪州メルボルン大、富山大との国際共同研究)

 本学系・細胞機能学研究室の藏本博史准教授らは、マウス大腸におけるセロトニン含有腸内分泌細胞(腸の内分泌細胞)の形態と分布を明らかにしました。本成果は、2021年2月6日 Cell and Tissue Research誌(Impact factor (2019): 4.044)にオンライン掲載されました。

 セロトニン (5-HT) 含有腸内分泌細胞は、多くの身体機能の調節に寄与していますが、その機能が細胞の形状の違いと関係しているかどうかは不明です。今回の研究では、マウス大腸の5-HT含有腸内分泌細胞のサブタイプの形態と局在を同定しました。その結果、5-HT細胞は盲腸や遠位結腸に比べて近位結腸で最も多く分布していることがわかりました。大腸は、内腔に達する突起を持つ開放型(open type: O)細胞と、内腔に突起を出さない閉鎖型(closed type: C)細胞の両方を有しており、その突起の有無と細胞が有する基底突起の長さによって、O1、O2、およびO3と、C1、C2、およびC3細胞に分類されました。O1とC1細胞は長い細胞質突起を持ち、時には100 μmの長さの突起を持つ細胞もあり、このような細胞は遠位結腸で最も多く認められました。これらの長い基底突起は粘膜上皮細胞の基底側と基底膜の間を走っており、強い5-HT免疫反応を示していました。恐らく、これらの基底突起は、大腸の機械的な圧力などに反応して、上皮細胞とコミュニケーションをとるために、理想的に配置されていると推測されます。O2細胞とC2細胞は短い基底突起を持ち、結腸遠位部では最も一般的でした。O3とC3は基底突起を持たない、あるいは非常に短い基底突起を持つ細胞でした。近位結腸では、O3の解放型5-HT細胞の多くが、内腔面側に豊富に存在し、内腔に5-HTを放出して内腔の5-HT受容体に作用を及ぼすのではないかと考えられます。O3型5-HT細胞は、すべての大腸各部の陰窩底部領域に多数存在し、5-HTを放出して陰窩増殖帯の細胞更新に影響を与えている可能性があると考えられます。

Kuramoto H, Koo A, Fothergill LJ, Hunne B, Yoshimura R, Kadowaki M, Furness JB. Morphologies and distributions of 5-HT containing enteroendocrine cells in the mouse large intestine. Cell Tissue Res. 2021 May;384(2):275-286. doi: 10.1007/s00441-020-03322-6. Epub 2021 Feb 6.