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ラット食道神経におけるサブスタンスP免疫活性の局在と由来に関する研究

 昨年度、大学院修士課程を修了した細胞機能学研究室の森下諒さんと藏本博史准教授らは、ラット食道神経におけるサブスタンスP(SP)免疫反応の局在およびSP神経線維の投射領域を明らかにしました。本成果は2022年5月4日に国際学術雑誌であるHistochemistry and Cell Biology(Impact Factor (2020) 4.304)にオンライン掲載されました。

 本研究では、食道の内在性サブスタンスP(SP)ニューロンの細胞体およびSP神経線維の数、分布、化学的コーディング、およびその投射領域を免疫組織化学的に調べ、その機能的役割について検討しました。SPニューロン細胞体とSP神経線維は食道筋層間神経叢に多数認められ、SPニューロン細胞体数は食道口腔側から腹腔側に向かって徐々に減少していました。二重免疫染色により、これらのほとんどのSPニューロンはコリン作動性(コリンアセチルトランスフェラーゼ陽性)で、一酸化窒素作動性(一酸化窒素合成酵素陽性)のものはほとんど認められませんでした。コリン作動性SP神経終末はいくつかの食道筋内在性ニューロンの細胞体を取り囲み、また、粘膜筋板、下部食道括約筋、血管周辺にも多数のコリン作動性SP神経終末が見られました。一方、食道横紋筋運動終板上の迷走神経由来の運動神経終末のほとんど全ては、カルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)陽性反応を示しましたが、少数の運動終板内には細いSP数珠上神経終末が存在することが判りました。Fast Blue(FB)を用いた逆行性神経トレーシング法により、後根神経節(DRG)と節状神経節(NG)の多数の知覚ニューロンが食道へ投射していることや運動終板内のSP神経終末のほとんどがCGRP陽性であることが明らかとなりました。以上の結果から、ラット食道の内在性SPニューロンが、少なくとも運動ニューロン、介在ニューロン、血管運動ニューロンとして、それぞれ平滑筋運動、神経伝達、血液循環の局所制御に関与している可能性が示唆されます。さらに、少数の運動終板に細いCGRP 陽性のSP数珠上神経終末が存在する所見から、これらのSP神経終末はDRGやNGの外来性知覚神経に由来し、横紋筋運動終板内の化学的状況を感知し、食道運動調節に関与する可能性が考えられます。

Localization of substance P (SP)-immunoreactivity in the myenteric plexus of the rat esophagus. Morishita R, Yoshimura R, Sakamoto H, Kuramoto H. Histochem Cell Biol. 2022 May 4. Online ahead of print.
doi: 10.1007/s00418-022-02104-1. 
PMID: 35507035