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ショウジョウバエanillin mRNAが、自身のコードするアクチン結合ドメインを介してAnillinタンパク質の働く領域に予め局在化する分子機構の一端を解明

 染色体工学研究分野の吉田英樹准教授と修士課程大学院生平島智貴さんらは、ショウジョウバエの初期胚を用い、anillin mRNAが、自身のコードするアクチン結合ドメインを介してAnillinタンパク質が働く領域に予め局在化する分子機構の一端を明らかにしました。

 細胞で働くタンパク質の細胞内局在は厳密に制御されています。これまで、タンパク質は、遺伝子から転写されたmRNAを鋳型に合成された後、自身の持ち場へ局在化すると考えられてきました。しかし最近の研究により、鋳型であるmRNAが、タンパク質として働くべき場所に、予め局在化する例が数多く発見されました。ただし、この局在化に「mRNAのどの部分が重要」「どんな因子が関わるか」など、具体的な分子機構は、一部の例を除きほとんど分かっていませんでした。

  本研究では、ショウジョウバエ初期胚で特徴的な局在パターンを示すanillin mRNAに注目し、その局在化機構の解明を目指しました。一部分を除去したanillin mRNAを発現するショウジョウバエを多数作製し、重要な領域を絞り込んだ結果、anillin mRNAの局在化は、自身がコードするアクチン結合ドメイン翻訳依存的に起こることを明らかにしました。この時期のAnillinタンパク質が必要となる領域は、非常に狭い領域に限られている上、その細胞内の位置がダイナミックに変化しており、今回明らかにしたmRNAの局在化機構が、より正確に、より効率的にタンパク質を供給する基盤になっていると考えられます。自身の翻訳産物を利用し局在化するmRNAは、これまでにほとんど報告されておらず、分子機構の分かっていない局在化mRNAを解析する上で、非常に重要な報告となります。

 本研究は2018年8月27日にScientific Reportsに掲載されました。

Hirashima T, Tanaka R, Yamaguchi M, Yoshida H.  The ABD on the nascent polypeptide and PH domain are required for the precise Anillin localization in Drosophila syncytial blastoderm. Sci Rep. 2018 Aug 27;8(1):12910. doi: 10.1038/s41598-018-31106-0.
PMID:30150713