sp_menu

神経発達障害の原因遺伝子BCL11A/BのショウジョウバエホモログCphの神経特異的ノックダウンが学習障害、運動機能障害を引き起こす

染色体工学分野の大学院生 山口瑞季さんとHuynh Man Anhさん、吉田英樹准教授らは、京都府立医科大学との共同研究で、 神経特異的なChronophageのノックダウンが、神経筋接合部のシナプスの分岐数の増加、運動機能障害や学習障害を示すことを明らかにしました。本成果は、Experimental Cell Research誌に掲載されました。

神経発達障害(NDD)は中枢神経系の発達不全により社会生活に困難が生じる疾患群であり、知的障害、自閉症スペクトラム障害、注意欠陥・多動症などが含まれます。発症には遺伝的要因と環境的要因があり、現在までに2,500以上の遺伝子が知的障害に関与していることが分かっていますが、NDD発症の分子メカニズムの全容は明らかになっておらず、根本的な治療法はありません。近年、新たに複数のNDD患者でB 細胞リンパ腫/白血病 11A/B (BCL11A/B) 遺伝子の突然変異が見つかりました。BCL11A/BのショウジョウバエホモログはChrohophage (Cph)として知られています。本研究では、ショウジョウバエの神経系特異的にCph をノックダウンし、NDD 様の症状を示すかどうか調べました。Cphの神経系特異的ノックダウンの結果、Bcl11aノックダウンマウスの海馬で見られる神経軸索分岐の増加と似た神経筋接合部のシナプスの分枝数の増加、幼虫の学習および運動障害、成体のてんかん様行動が誘導されました。さらに、哺乳動物BCL11の標的遺伝子のショウジョウバエホモログの発現レベルが、Cphノックダウン体においても減少しました。これらの結果は、Cphの神経特異的ノックダウンが BCL11A/B 機能不全によるNDD発症の分子機構を調べるための有望なモデルであることを示唆しています。

Knockdown of Chronophage in the nervous system mimics features of neurodevelopmental disorders caused by BCL11A/B variants. Yamaguchi M, Huynh MA, Chiyonobu T, Yoshida H. Experimental Cell Research 2023, 433(2):113827. doi: 10.1016/j.yexcr.2023.113827. (Accepted 19 Oct. 2023).