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老化した個体の筋肉老化も抑制できる機能性食品をみいだしました(バイオメディカルセンター:食品企業との産学共同研究)

 バイオメディカル教育研究センターのTuan Dat Le博士(R5年度研究員)と井上喜博博士は、万田発酵kkとの共同研究により、発酵食品FBPがショウジョウバエ成虫の酸化ストレスを軽減し、寿命を延長させること、ある程度老化した成虫に対しても筋肉の老化を遅延させることを見出しました(機能性食品とその成分に関する国際誌Journal of Food Bioactivesに発表)。
 同センターでは、早期に老化するショウジョウバエ系統を用いて筋肉、脳神経系、消化管上皮に現れる老化表現型を定量化する方法を開発し、抗老化物質および食品の探索、作用機構の研究をおこなってきました (特許第6370577号;Oka et al., 2015, Zhang et al., 2020, Le et al., 2019, Le and Inoue, 2021, Suzuta et al., 2022; Ozaki et al., 2023, Tsuji et al., 2024)。植物由来の発酵食品FBPは、53種類の野菜などを3年間発酵させた健康補助食品(万田発酵kk提供)です。これには培養細胞系における抗ウイルス効果、抗酸化、抗腫瘍効果や養殖魚などの健康促進効果が報告されています。Le研究員らは、上記のショウジョウバエ評価系を用いて、極低濃度のFBPを与えた成虫でも寿命が有意に延長することをみいだしました。FBP摂取により、酸化ストレスによる生存率低下と消化管上皮の障害が抑制されました。加齢に伴い、成虫の運動量は低下してゆきますが、FBPにより低下が抑制されました。老化とともに筋肉内には損傷タンパク質が蓄積してゆきます。これらはユビキチン化された凝集体として検出できます。羽化直後からFBPを継続摂取した成虫では、非摂食群と比べて凝集体の数、量とも減少していました。興味深いことに、ある程度老化した(ヒトの中年期に相当)成虫でもその抑制効果が認められました。これらの結果から、FBPには生体内でも抗酸化作用と老化防止効果があると考えられます。FBPにより抗酸化遺伝子群の転写因子Nrf2は活性化せず、別の抗酸化因子が標的と考えられます。今後、哺乳類モデルを使ってこの抗老化効果を検証するとともに、ヒトに外挿できるか検討が必要です。
Le, T.D., Suizu, T., Fujioka, K., Torii, H., and Inoue, Y.H.: Lifespan extension and suppression effects of fermented botanical product on the impairment of locomotor activity and accumulation of aggregates containing ubiquitinated proteins in the muscle of Drosophila aging-accelerated models. J. Food Bioact. 2024;28:59–67 DOI: 10.26599/JFB.2024.95028396