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高脂肪飼料の摂食によるショウジョウバエの肥満モデルの作製と抗肥満薬の作用機序解明に向けた研究:網羅的RNA-seq法による遺伝子発現が変化する遺伝子の同定に成功(サントリーGI社との共同研究)

 バイオメディカル研究分野の井上喜博 准教授と大学院生 東真穂さん、Le Tuan Datさんらは、サントリーグローバルイノベーション株式会社との共同研究により、ショウジョウバエ成虫に高脂肪配合飼料を摂食させることにより体内の蓄積脂肪が有意に増加することをみいだしました。この肥満モデルショウジョウバエに、哺乳類に効果がある抗肥満薬EGCG、ケルセチン配糖体を与えたところ、脂肪蓄積が抑制されることがわかりました。さらに、これらの肥満モデル、およびそれに抗肥満薬を摂食させた成虫においてどのような遺伝子の発現が変化しているか、RNA-seq法により網羅的に解析しました。その結果、肥満モデルショウジョウバエでは、脂肪代謝、解糖系ならびに糖新生、酸化ストレス反応に関連した複数の遺伝子のmRNA量が変化していることがわかりました。さらに興味深いことに、抗肥満薬を与えた成虫においては、肥満モデルで低下していたdHSL(哺乳類のリパーゼEに相同)、脂肪蓄積の調節に必要なLsd-1(哺乳類のPLINファミリータンパク質に相同)などの転写量が有意に上昇していることがわかりました。これらの酵素、調節タンパク質が抗肥満薬の作用機序の鍵を握る可能性も考えられます。本研究で作製されたショウジョウバエは、高脂肪飼料の摂食により簡単に肥満を再現できる動物モデルになります。これらを用いて、新たな抗肥満薬や機能性食材の探索、抗肥満効果のある薬剤の作用機序の解明が進むことが期待されます。

Azuma, M., Le, T.D., Yoshimoto, Y., Hiraki, N., Yamanaka, M., Omura, F., and Inoue, Y. H. RNA-seq analysis of diet-driven obesity and anti-obesity effects of quercetin glucoside or epigallocatechin gallate in Drosophila adults. Eur Rev Med Pharmacol Sci 23, 857-876. DOI: doi: 10.26355/eurrev_201901_16901. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/30720195