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細胞増殖制御用繊維を作る遺伝子組換えカイコの開発に成功  ― 新しいバイオマテリアル素材開発の糸口 ―

昆虫工学研究分野の小谷英治教授は、カイコが糸を吐き出す前に、糸を作る絹糸腺を加工することにより、いろいろな物理的性質を持つ繊維(テグス等)を作ることができる。この研究では、生糸タンパク質を作る組織(後部絹糸腺)で、細胞増殖因子である腺維芽細胞増殖因子(FGF-2)を発現するカイコを遺伝子組換えにより作り出した。このカイコでは、同時にFGF-2を安定に保ちつつ少しずつ放出する性質を持つタンパク質結晶(多角体)も、同じく後部絹糸腺で発現させた。この結果、本研究ではじめて、昆虫個体組織の中で多角体が正しく結晶化すること、この結晶の中に細胞増殖因子を閉じ込めることができること、さらに、この細胞増殖因子を固定した多角体を含む加工絹糸は、FGF-2による細胞増殖促進活性を示すことが明らかとなった。多角体の働きにより、このFGF-2の活性が乾燥等から明らかに安定に保たれることも示された。この技術は、ウイルスベクターと培養細胞を用いないため、ウイルスおよび培養液中の動物血清を用いない方法で細胞増殖因子を作ることができる。さらに、絹糸の成分は、生体にアレルギー反応を起こしにくいため、こうした機能性の加工絹糸は、様々な用途で生体に安全に用いることができるバイオマテリアルになると期待される。

この研究成果は、Scientific Reportsに掲載されました。

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