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辛み成分カプサイシンは、脳のTRPV1受容体に作用し炎症と体温低下を引き起こす  ― カプサイシンの有用性と危険性 ―

 生体機能学研究分野の宮田清司教授と修士課程大学院生の吉田亜矢加さんは、自然科学研究機構生理学研究所の富永真琴教授のグループと協力して、唐辛子に含まれているカプサイシンの受容体で、痛みと温度のセンサータンパク質であるTRPV1の脳内作用機構を解明しました。TRPV1は、痛みも受容することから、多くの製薬企業が鎮痛剤の標的として開発を行っています。しかし、TRPV1の拮抗剤は発熱を生じるために医薬品開発に支障となっています。本研究では、脳のTRPV1が正常時には活性化されていないが、感染などの炎症時に活性化され、脳内炎症や発熱抑制の機能を持つことを明らかにしました。また、脳内のTRPV1活性化は炎症性のSTAT3シグナリングを活性化して体温低下を引きこすことも明らかにしました。これらの結果より、TRPV1は、炎症時における脳内の体温調節や免疫系活性化に極めて重要なメディエーターであることが明らかになりました。以上、本研究は、食品工学あるいは医薬品開発の観点から、TRPV1の有効利用に大きな貢献をする重要な成果であります。一方、TRPV1刺激を促すカプサイシンを含む食品の過剰摂取は、特に幼児期において、脳の発達に悪影響を与える可能性が示唆された。本研究は、2016年5月18日Scientific Reportに掲載されました。

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