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昆虫工学の小谷英治教授、日本蚕糸学会賞受賞

この度、カイコの遺伝子組換え技術の応用研究の成果が認められ、日本蚕糸学会賞受賞となりました。

受賞テーマ:DNA修飾酵素の異所発現によるカイコ組織標的機能不全化の応用

(内容)遺伝子組換え技術により、カイコの絹糸腺のいくつかの組織で、モンシロチョウのモノADP-リボシル化酵素を発現させたところ、中部絹糸腺由来のセリシンと後部絹糸腺由来の絹糸フィブロインをそれぞれつくらないカイコを得ることに成功しました。セリシン繭・高フィブロイン繭はそれぞれの成分しか持たない繭であり、通常の繭からの分離のステップを省くことができ、セリシン・フィブロインを未分解の状態で容易に分取できます。これら繭成分は加工してスポンジやゲルなどをつくり出すことができ、細胞培養にも利用できることもわかりました。特にセリシンは、未分化幹細胞の培養に適していることもわかりつつあります。サイトカインを含む繭成分の利用の幅も広げることができます。
さらに、繭糸をつくらない、繭にこもらないカイコを世界で初めてつくることにも成功しました。繭糸をつくらないことで栄養素を多量に蓄積した蛹になり、蛹の体内ではタンパク質を多量につくる能力が見られます。この蛹は、バキュロウイルスベクターによる効率的タンパク質生産に威力を発揮する効果的な個体となると考えられます。

 このように、繭糸の成分の産生不全を人工的に誘導することは、カイコおよび繭の有効な利活用法を生み出すことにつながることがわかりました。

令和6年度 日本蚕糸学会賞受賞記念講演