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ラット食道横紋筋におけるカルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)を含む知覚神経線維終末の局在:運動終板の三重神経支配に関する研究

 ラットの食道横紋筋において、カルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)を含む知覚神経線維終末の局在について詳細に解析しました。これまでの研究では、多数の食道横紋筋線維が二重に神経支配されると考えられていましたが、今回の研究により、それらの一部の食道横紋筋線維がCGRPを含む知覚神経線維によっても支配されている可能性が示されました。

 本研究では、ラット食道の膜片全載標本を用いて、CGRP神経線維終末の同定を行いました。また、神経逆行性トレーシング法を用いて、これらの神経線維終末の由来を特定しました。その結果、CGRP神経線維終末は、少数の限定された食道横紋筋線維の運動終板に局在しており、これらの運動終板のほとんどは、食道内在性の一酸化窒素(NO)合成酵素を含むニューロンからの神経線維終末を受け取っていました。さらに、神経逆行性トレーシング法により、迷走神経の知覚神経節である節状神経節や脊髄後根神経節において、CGRP陽性反応を示すニューロンが検出されました。これらの研究結果から、食道横紋筋の運動終板に存在するCGRP神経線維終末は知覚性であることが示唆されます。したがって、一部の食道横紋筋線維は、迷走神経由来の運動ニューロン、食道内在性ニューロン、節状神経節または脊髄後根神経節の知覚ニューロンによって三重に神経支配されている可能性があります。

 今回の研究結果から、食道の一部の横紋筋線維が三重に神経支配されることが明らかとなり、食道運動の神経学的メカニズムに関する理解が深まることが期待されます。また、この研究結果は、上部食道における運動機能障害や食道を支配する迷走神経や知覚神経の神経学的障害の治療法の開発に貢献する可能性があります。

 

 

Localization of sensory nerve terminals containing calcitonin gene-related peptide (CGRP) on striated muscle fibers in the rat esophagus: Evidence for triple innervation via motor endplates.
Hirofumi Kuramoto, Mana Yabe, Ryo Morishita, Ryoichi Yoshimura, Hiroshi Sakamoto.
Auton Neurosci. 2024 Apr 12;253:103177. Online ahead of print. Published online: April 12, 2024; DOI: https://doi.org/10.1016/j.autneu.2024.103177