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日本経済新聞に単為生殖に関蓮する記事が掲載されました(バイオメディカル分野)。

バイオメディカル学教育研究分野の井上喜博教授らは、単為生殖が起きるメカニズムに関する発生生物学的研究成果をGeneticsに発表しました(昨年末HP掲載)が、これを広げた記事が日経新聞の科学の扉に掲載されました(2023年8月5日電子版)。

 

通常の有性発生は単数体(1n)の卵と精子の受精から始まり、両親由来の二倍体(2n)の染色体セットをもつ個体が作られます。ヒトをはじめとする哺乳類ではこのような単為発生が起きないような制御機構が存在しますが、無脊椎動物では、多様な繁殖様式が存在し、雌だけで子孫を残す「単為発生」がしばしば観察されます。例えば、ミツバチやアブラムシ(アリマキ)は通常は有性生殖をしますが、季節や年齢、環境などの条件次第では単為発生もおこなうことが知られています。ショウジョウバエの1種では、雌が産む未受精卵(1n)から2倍体が発生し、雌だけで増えます。この未受精卵のなかでは、精子から卵に供給されるはずの中心体が自然発生的に構築されます。それが初期胚の分裂極として使われ、2倍体(2n)が作られます。昆虫を始め、無脊椎動物の中には受精による有性生殖の他に、単為発生で増える例も少なくありません。一方、哺乳類以外の脊椎動物でも、魚類や両生類の一部、あるいはコンドルなどの鳥類やトカゲなどの爬虫類でも単為生殖の報告があります。むしろ、生物全体を見渡せば、哺乳類のように単為生殖ができないように進化した例は特殊と言えます。動物の単為発生は進化的に有性生殖の基盤と位置付けられることから、このような研究は動物の生殖機構を明らかにするのに役に立ちます。(なお、新聞記事には著作権があり、ここに転載できません。閲覧ご希望の方は井上教授まで問い合わせください。)